格言「努力は裏切らない」は信じていいの?

2021年10月10日日曜日

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成功者からのアドバイスには気をつけろ!


各分野の成功者が、インタビューなどで語る、珠玉の言葉。それは、一般人である我々にとっても、参考となる貴重なものではある。が、それを丸ごと、鵜呑みにするのはとても危険だ。立ち位置が異なるために、必ずしもすべての人に、フィットするとは限らないからだ。

それなのに、それらの格言を、安易に誰に対してでも使おうとする人がいる。そのせいで、成功者のようには振る舞えない自分を、卑下してしまう人も出てくる。どちらも間違いだ。直ちに、認識を改めた方がいい。自分の仕事に不幸を感じる人を、これ以上増やさないためだ。


「努力は裏切らない!」

スポーツの世界で成功を収めたアスリートが、好んで使う言葉がコレだ。

「地道な努力があったからこそ、今の自分がある!」

そのような自負が、彼らにはあるのだろう。実際、血のにじむような努力を、彼らが重ねて来たことは、誰もが認めるところではある。

しかし、その理屈を、トップアスリートではない下の層にまで、拡張するのには無理がある。努力が、常に、実を結ぶとは限らないのだ。実際、いくら努力しても、結果が出ないことだってある。いや、むしろ、努力の有無に関わらず、成功者にはなれない人の方が多いはずだ。


それなのに、それを当人の努力が足りないからだと、切り捨てるのはあまりに酷だ。例えば、次のように言われたとしたら、どうだろう?

「大谷翔平のようにホームランが打てないのは、君の努力が足りないからだ」

「メッシのようにシュートが決められないのは、君の努力が足りないからだ」

おいおい、何を言っているんだい? と、ほとんどの人は感じることだろう。自分が大谷翔平やメッシにはなれないことなんて、人から言われなくたって分かっている。この世に産まれた時点で、それは既に閉ざされた道なのだ。


しかし、もう少し身近にあるゴールに対しては、成否を努力の量に絡めて評価したがる人が少なくない。例えば、ビジネスの世界では、次のような言葉で。

「任された仕事で成果が出せなかったのは、君の努力が足りなかったからだ」

これも、スポーツの世界同様、間違いであることが多い。そもそも、人それぞれに、ベースとなる才能が違うのだから、一括りにして論じてはいけない。個々人の才能の如何に、目を向けるべきなのだ。


ならば、どうすればいいか?

報われるべき対象に対して、報われるべき努力をすることだ。そのためには、個人が個人の責任で、自分に才能がある領域を、まずは見つけることが求められる。後は、その領域の中で、思う存分、努力すればいい。そうすれば、理屈の上では、その領域での、上位の座を目指すことが出来るはずだ。


もう一度、冒頭で取り上げた格言を振り返ってみよう。

「努力は裏切らない!」

これまで論じてきた通り、これは多くの人にとっては間違いである。無駄な努力をする方向に、ミスリードしてしまう危険性がある。だとしたら、正解は?

「正しく行った努力は裏切らない!」

これがその正解である。

くれぐれも、無責任な他者の言葉を鵜呑みにして、間違った努力をしないように、この言葉を肝に銘じたいものだ。


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